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20190722 Whiteboard Conference

  • 執筆者の写真: Hajime
    Hajime
  • 2019年7月22日
  • 読了時間: 3分

80代女性

5日前から食思不振が出現,2日前から右半身に「ぶつぶつが出てきた」と訴え受診. 嘔吐はなく,食事を摂ることで嘔気は悪化しない.また便秘や下痢もない.

既往は6年前に右内頚動脈閉塞症を指摘されており,5年前にStanford A型大動脈解離で上行大動脈置換術を施行されている.その他心房細動,CKDを指摘されている.

薬はアスピリン,ジゴキシン,βブロッカー,CCBなどを内服している.

来院時意識清明,体温37.3℃,血圧150/70mmHg,脈拍数70bpm,呼吸数10回,SpO2 95%.

右顔面と舌右側,さらに右上肢に紫斑が散在している.

本人曰く,右を下にして寝ていたとのこと.


食思不振と倦怠感以外に目立った症状がなく,捉えどころがない.

食事で嘔気が増悪しない点からはあまり消化器由来らしくないかもしれない.

微熱はあるが炎症病態なのかどうかこの時点では判然としない.ジゴキシンやβブロッカーを内服しているため脈拍数が上がっていなくても感染症を否定できないが,呼吸数は上がっていないようだ.

CKDがありジゴキシンを内服しているため,ジゴキシン中毒がないかは確認が必要だろう(ちなみにジゴキシン中毒の有名な症状として黄視症がある).

この方は血液検査でWBC 2万,CRP 15と高度炎症反応があり,膿尿・細菌尿の所見から尿路感染症を否定できず,入院となった.

右顔面と右上肢の紫斑に関しては,まあ右を下にしていたから・・・ということであまり注目しなかった.

その後血液培養と尿培養でKlebsiellaが陽性となり,やはりUTIからの菌血症か・・・と思っていた矢先,患者さんが右の視力低下を訴えはじめた.

TTEで明らかな疣贅は認めなかったものの,造影CTで大動脈のグラフト置換部周囲に膿瘍形成あり,人工血管感染症の診断に至った.

診断:人工血管感染症,細菌性眼内炎

当初は尿路感染症からの菌血症として入院となったが(実際そうだったのかもしれないが),眼内炎をきたしたことで血管内感染症が疑われ,上記診断となった.

右顔面と右上肢の紫斑は何だったのか?

普通,感染性心内膜炎は内頚動脈の方に疣贅が飛んで脳梗塞になるのだが,この方の場合は右の内頚動脈が閉塞していたため,外頚動脈の方に飛んでJaneway lesionのような病変を作ったのかもしれない.

Janeway lesion, Osler結節については,血管炎や免疫複合体沈着などの機序が言われていたが,最近では微小な血栓なのではないかと考えられている.

Janeway lesionは表在血管,Osler結節は真皮の中~下層の血管が詰まってできる.

なお,細菌性眼内炎の起炎菌としてはカンジダが有名だが,実はKlebsiellaが最多である.

<Take home message>

人工血管を有する患者の感染症では,人工血管感染症を常に鑑別に挙げる

 
 
 

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