2019/5/20 Whiteboard Conference
- Hajime
- 2019年5月20日
- 読了時間: 2分
80代女性
主訴:左下肢の痛み
子宮癌術後で左下肢リンパ浮腫の指摘あり,蜂窩織炎を起こしたこともある方.
2日前から徐々に左下肢の痛みが出現.一度ER受診するも,リンパ浮腫によるものだろうとのことで帰宅. その後歩行困難となり,発熱もみられたため受診.
受診時発熱あり,E4V3M6と意識障害あり.両下肢に著明な浮腫を認めた.
痛みは荷重で増悪し歩行困難であるものの,下腿に熱感や圧痛はなし.

Key word: 急性の両下腿浮腫と左下肢痛を伴った発熱,意識障害
この時点では蜂窩織炎,DVT,壊死性筋膜炎などが鑑別に挙がりましたが,両下腿浮腫の説明がつきません.
当科がコールされ診察した際には左膝関節に著明な熱感腫脹があり,自動時,他動時ともに痛みがありました.
また眼瞼結膜に点状出血があり,手指や足底にも圧痛のない点状出血を認めました.
診断:感染性心内膜炎に伴う化膿性関節炎
心内膜炎に伴い心不全をきたし,両下肢の浮腫が出現していたようです.
丁寧に診察すれば痛みの原因が膝関節であることは容易にわかりましたが,患者さんは「関節が痛い」とは言ってくれません,あくまで「足の痛み」という表現になります.
痛みの診療においては,痛みの解剖学的診断をすることが非常に重要です.
関節であれば自動時他動時とも痛く,また全可動域に対して痛みがあるはずです.一方向だけ痛いときは付着部など関節周囲に炎症の首座があると考えられます.
もちろんリンパ浮腫は痛くないですし,蜂窩織炎も痛みを訴えることは通常ありません.
化膿性関節炎を見逃すと関節拘縮をきたし機能予後不良となる場合があります.
高齢者の急性単関節炎では化膿性関節炎と結晶性関節炎の鑑別が常に問題になりますが, 少なくとも救急外来では関節炎の存在を見逃さないようにしましょう!
<Point>
・痛みの解剖学的診断をつける
・蜂窩織炎は痛くない
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