2019/4/22 Whiteboard Conference
- Hajime
- 2019年4月22日
- 読了時間: 3分
バタバタで更新が滞っており大変申し訳ございませんが,新年度一個めです.

20代女性
4日前から倦怠感を自覚.
近医で脈が早いことを指摘され受診.
特に発熱や痛みなどの自覚症状はなく,症状は倦怠感だけ.
「全身倦怠感」は非常にとらえどころのない主訴で鑑別を絞るのが難しいですが,
下記のChronic FATIGUE Syndromeを意識して問診,診察をしてみるとよいでしょう.
C: COPD F: CHF うっ血性心不全 A: Anemia/Ferritin欠乏 T: Tumor 腫瘍 I: IM 伝染性単核球症 G: MG 重症筋無力症 U: drUg 薬剤 E: Endocarditis 感染性心内膜炎 S: Sugar(高血糖/低血糖)
さてこの患者さんは来院時に38℃近い発熱があり
眼球突出や甲状腺腫大があり,検査結果から甲状腺機能亢進症が疑われました.
意識レベルはE4V5M6であり中枢神経症状はなさそうであったものの,高度の頻脈あり甲状腺クリーゼ疑いとして入院となりました.
甲状腺機能は当日中に検査ができないことも多いと思います.
一方で甲状腺クリーゼは非常に致死率の高い疾患であり,疑ったら治療しなければなりません.

内分泌専門医のみならず,救急に携わる医師であれば知っていなければならない疾患と言えるでしょう.
抗甲状腺抗体も当日には結果が出ないと思いますが,
破壊性甲状腺炎(特に無痛性)とBasedow病の鑑別が難しい場合があります.
そんなときはFT3とFT4の比を見ましょう.
破壊性甲状腺炎が甲状腺内に貯蔵されているT4がそのまま放出されるのに対し
Basedow病では肝臓でのT4→T3の変換が亢進するため,
F-T3/F-T4>4.2であればBasedow病の可能性が高いと言われています(研究や検査キットにより異なるので注意).
抗甲状腺薬の投与により倦怠感は改善しましたが
「性格が子供っぽくなってしまった.もともとはこんなではなかった」とご家族よりお話がありました.
この方はGlasgow coma scaleで言うとE4V5M6でしたが,たしかに話し方が子供っぽい印象がありました.
担当医やスタッフは「そういうキャラクターの人なのか?」と思っていたようですが,実は違ったらしい.
そこで頭部CTを撮影したところ出血性梗塞があり,頭部MRVではなんと横静脈洞血栓症を認めました.
意識レベルはGlasgow coma scaleで評価するのが一般的ではありますが,
それだけだと不十分な場合も多々あります.
実際にこの方は毎日回診してもE4V5M6であるため,意識障害の存在に気付けなかったわけです.
意識レベルの評価をするときは,「ここどこかわかりますか!?」「お名前言えますか!?」と聞くだけでなく,普通の世間話をしてみて会話が成り立つかどうかを見ることも大事です.
意識障害の9割は中枢神経疾患が原因であると言われています.

基本的には上のフローチャートに従って鑑別を進めていけばよいのですが,
神経局在症状がはっきりしなくても説明のつかない意識障害がある場合は頭部画像は撮影しておいた方がよいかもしれません.
ちなみに,甲状腺機能亢進症は血栓傾向になるということが言われています.
この方は甲状腺機能亢進症の結果として脳静脈洞血栓症になったのかもしれません.
盛りだくさんの内容ですが,以上です.
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