2019/1/21 Whiteboard Conference
- Hajime
- 2019年1月21日
- 読了時間: 3分
本年もどうぞよろしくお願い致します.遅ればせながら2019年一発めです.

Parkinson病のある高齢男性
3週間の経過で飲み込みにくさが出現し,反応も悪くなったとのことで受診.
「飲み込みにくい」という主訴の患者をみるときは,口腔内の問題なのか嚥下機能の問題なのか食道の問題なのかを考えるようにしましょう.
構音障害を伴っていれば中枢神経疾患による嚥下機能の問題と考えた方が良いでしょう.
しかしこの症例は反応性の低下もあるようなので,「意識障害」として鑑別を進めた方がよさそうです.
意識障害の鑑別法としては"AIUEOTIPS"が知られており,網羅的に検索をするのも悪くはないのですが
神経局在症状のあるなし,熱のあるなしで鑑別を進めた方がより効率的と思います.
局在症状があり,突然~急性発症であれば脳梗塞・脳出血,Todd麻痺,低血糖性片麻痺,
慢性経過ならば脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などが鑑別に挙がります.
局在症状がなく,熱があれば髄膜炎・脳炎やその他中枢以外の重症感染症,
熱がなければ低血糖や高アンモニア血症,薬物中毒,電解質異常など代謝系疾患から考えることになります.
症例では20mg/dL台の低血糖があり,これによる意識障害と考えられました.ここまで著明な低血糖にもかかわらず少しぼんやりする程度の意識レベルであり,慢性的に低血糖ぎみであったのかもしれません.
動悸や冷汗などの交感神経症状の先行がなく突然昏睡状態に至る低血糖を無自覚性低血糖と言います.β blockerを内服していたり,糖尿病やParkinson病による自律神経障害があったりする高齢者に多いとされています.
さらにこの方はインスリンやSU剤を使用していないにもかかわらず重症低血糖に至っていました.
低血糖の鑑別としては…
・薬剤性(インスリン,SU剤以外にはST合剤,キノロン,シベンゾリンなどだがあらゆる薬剤が低血糖の原因になるとされている)
・敗血症
・肝不全
・飢餓
・インスリノーマ
・インスリン自己免疫症候群
・副腎不全
・ダンピング症候群
が挙げられます.
原因不明の低血糖をみたら,低血糖時のインスリンとCペプチドを提出して病態を把握しましょう.
現在は低血糖に対する対症療法を行いながら原因を検索しているところです.
ちなみにこの方は3週間前からの経過なので敗血症ではあり得ないのですが,なぜ敗血症で低血糖になるのでしょうか?
・骨格筋でのインスリン感受性上昇
・肝臓での糖新生低下
・エンドトキシンのインスリン様作用
・相対的副腎不全
この4つの機序が知られています.
3つ目の機序からGNRによる感染症の方が低血糖になりやすいと考えられます.
盛りだくさんでしたが,以上です!今年はもっと頑張って更新します...
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